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インタビュー記事/ゲームアニメーターSOTAさん

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ゲームアニメーターSota Yuyamaさんインタビュー

Sotaさん略歴

愛媛県出身、バンクーバー在住。カナダ歴28年
バンクーバーの高校を卒業後、VFS(Vancouver Film School)の2D、3Dのアニメーションプログラムを専攻。卒業後バンクーバーのゲーム制作会社でGame Play Animatorとしてキャリアを開始。

Demo Reel – 2016 from Sota Yuyama on Vimeo.

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アニメーションを学びたいと思ったきっかけは? 

バンクーバーの高校を卒業したのですが、大学で勉強したい事が見つけからず、気持ち的に宙ぶらりんな状態だったのですが、たまたま家の近所にアニメーションの学校の看板を見つけた事によって、そんなオプションもあるんだとそこから考え始めました。

元々、ゲームやアニメも子供の頃から好きだったので、そんな事の制作に関われたら楽しいなと単純に思い、色々とリサーチをし始めました。リサーチの結果、アニメーションを教えている学校は当時はバンクーバーに3校ほどあり、どの学校も手描きのアニメーションを教えていました。プログラムに入るためには絵のポートフォリオが必要となるので、学校側からライフドローイング(クロッキー)を進められ、始めてみると時間を忘れて没頭する事が出来たのをきっかけにこちらの道に進んでみようと思いました。

学校はいかがでしたか?

子供の頃から絵を常に描いている様な子供ではなかったので、本命の学校にはスキルが足りずに受からなかったのですが、Vancouver Film Schoolは受け入れてくれたので、そこで1年間の手描きの2Dアニメーションのコース、更に半年の3Dアニメーションのコースを取りました。

手描きのプログラム自体は一年間という短い時間でしたので、とにかく忙しかったのを覚えています。入学出来たものの、絵のスキルが未熟だったのは否めず、課題や卒業フィルムではキャラクターデザインなど、全てをシンプルにしてキャラクターの動き自体にフォーカスが出来るように作成しました。でも、今考えるとこれが逆に良かったと思います。シンプルにした事によってアニメーションにおいて大事だったタイミングについて色々と試行錯誤ができ、エネルギーをもったアニメーションの作り方を学んでいたと思います。

そして、3Dアニメーションコースでは自分の絵のスキルの未熟さから解放され、パソコンの中で思う存分キャラクターを動かせるようになり、更にアニメーションに没頭出来始めました。振り返ってみるとここでようやく自分の中で何かがハマったんだと思います。

学校に入ったきっかけは、どちらかと言うと大学に行きたくないという、後ろ向きなモチベーションでしたし、アニメーションが本当に好きになるという確約はなかったのですが、取り敢えず学校に行くという行動を取れて良かったなと思いました。そして、それに対しての親のサポートには感謝しかないです。

アニメーションのスキルを得た以外にも、学校に行くと、同じような趣味や思想を持った人達が集まっているので、自分にとって快適なコミュニティーを見つけ始めるきっかけであったのが良かったですね。英語も当時はそんなに上手じゃなかったですけど、共通の趣味を通して色々と話をする事ができましたし、自分にとって合った環境が見つかったと思いました。

映像作品ではなくゲーム業界のアニメーターを選んだきっかけは?

初めて面接をしてくれた会社がゲーム会社で、偶然にも大好きだったプロレスを題材としたプロジェクトでした。そして、面接の一環として行われたテストで自分が作ったアニメーションが実際に組み込まれたのを見るとこの上なく嬉しく、「これだ!」と思ったのがきっかけです。残念ながらプロレスのプロジェクト自体はキャンセルとなり、就職も出来なかったのですが、その時面接していただいた方から他のプロジェクトに呼ばれ、晴れてゲーム業界に就職しました。

テレビや映画などフィルム関係にも興味があったのですが、インタラクティブなコンテンツを作るのが楽しすぎて虜になり、それからはずーっとゲーム制作を続けています。

ゲーム制作にはどんな役割分担があり、Sotaさんはどんな役割ですか?

ゲーム制作会社ではざっくり言うと、ゲームデザイン、アート、エンジニアの3つの役割に分かれます。僕が担当しているのはアート部門の一部であるアニメーションです。

ゲームデザインはゲームの遊びのコンセプトやストーリー、ゲームの全体的な構成を考えます。アートはキャラクター、背景、VFX、アニメーションなど、ビジュアル関係を作ります。エンジニアはプログラミングによって、ゲームを稼働させる為の全ての構造を作成し、デザイナーの企画にそって、それぞれのアーティスト達が作ったものをスクリーンに映し出します。

僕が担当しているアニメーションは主にキャラクターの動きを作る作業となります。アニメーションは更に2部門に分かれ、1つはシネマティックアニメーション、もう一つはゲームプレイアニメーションです。

シネマティックはユーザーのコントロールが効かないオープニングの映像だったり、ゲーム最中に流れるムービーの中でのキャラクターのアニメーションを作るのに対し、ゲームプレイアニメーションはユーザーが実際にコントローラーを通してゲームを遊んでいる途中に動いているキャラクター達に使われているアニメーションです。インタラクティブなコンテンツなので、ゲームデザイナーやプログラマーと深く関わりながらアニメーションを制作する作業となります。

僕は過去20数年このゲームプレイアニメーションに携わってきました。いちアニメーターという役割から、アニメーションリードという管理職、そしてアニメーションディレクターというある意味監督的な役割を経験して、次の会社ではプリンシパルアニメーターとしてもっと制作に身近に関わる立場になる事になりました。

ーー ゲームプレイアニメーターはゲーム内のキャラクターにモーション=動きを入れ、キャラクターに命を吹き込むアニメーターなのですね。

はい、そしてアニメーション制作においてもキーフレームとモーションキャプチャーという二つの制作方法があり、キーフレームはキャラクターが全く動いてない状態から動きを付けていくのに対し、モーションキャプチャーは実際に人の動きからデータを取り、それをベースに開発に必要なアニメーションを作る作業です。キーフレームはディフォルメされた漫画の様な世界観の作品に向いており、モーションキャプチャーはリアルな作品に向いています。僕のキャリアにおいてはキーフレーム7割、モーションキャプチャー3割といった所だと思います。

主に使用しているソフトはなんですか?

アニメーション制作においては過去に3D Studio Max, Maya, Motionbuilderを使いました。

Mayaはアニメーション制作においてカスタマイズがしやすく、かなり汎用性が高いソフトです。ですが、そのままの状態ではゲーム制作に便利なツール等はあまりついておらず、それをサポートする人材が必要となります。ですが、アニメーション業界では長らく使われているソフトなので、コミュニティーが大きく、ウェブ上でも色々なツールがタダだったりや有料だったり沢山見つける事が出来ます。

Motionbuilderは人型のキャラクターを扱うのに特化したソフトです。ゲーム制作に便利なツールも最初からついており、特にモーションキャプチャーのデータを扱うのに優れています。最近バンクーバーのアニメーション業界において主流なのはMayaでモーションキャプチャーを多く使っている所ではMotionbuilderを使っていたりします。3D Studio Maxはもう殆ど使われていないと思います。

どんなスタイルのゲームを制作してきましたか?

基本的には格闘要素の強いアクションゲームに多く携わってきました。小学生の頃に空手を始めたきっかけで、プロレス、格闘技、武道などが好きだったし、個人的にもその様なゲームを好んでプレイしていたので、そのようなプロジェクトを求めてバンクーバーにて色々と転職をしました。特に20年ほど前のバンクーバーはElectronic Artsの存在が大きく、スポーツゲームがメインでしたので、アクション系のゲームを制作しているスタジオは少なかったです。なんだかんだで10社ほど転々としましたね。色々な縁もあり、好きなプロジェクトに多く関われたことはラッキーだったなと思います。それ以外にもスノーボード、ブレイクダンス、スケートボード、マウンテンバイク、サッカー等、違うジャンルにも関わる機会がありましたが、普段興味を持ってない事を学ぶことが出来て楽しかったです。

アニメーターとして日々気にしたり参考にしている事はありますか?

やはり、ある程度ゲームで遊ぶという事は大事なことだと思います。僕自身がガッツリと四六時中遊ぶわけではないのですが、評価が高かったり話題になっているゲームをプレイするとデザインやシステムなど、色々な学びが自然とあります。複雑なテクノロジーによって没入感を高めているゲームがある傍ら、とても簡単な遊びのコンセプトによってシンプルに楽しいゲームもあります。レビューやゲームのプレイ動画を見るだけでなく、実際に遊んで得られる経験はとても大きく、その様なインプットというのはとても大事だと思います。

それ以外では関わっているプロジェクトの題材を実際に自分で体験することも大事だと思います。幼少時に空手を始め、色々な武道や格闘技などを体験したのですが、実際にそういった経験がアクションゲームを作るのに生きていると思います。そして、他のプロジェクトにおいては、過去には全くやった事のなかったスケートボードに挑戦したり、ブレイクダンスのクラスを取ったりと、自分が出来る出来ないは別として、実際に体を通して体験しようとしたり、出来る人たちを生で観察したり、周りで楽しんでいる人達の雰囲気を感じたりする事も大事だと思います。

それ以外は恐らくアニメーターあるあるだとは思うのですが、外に出ていると自然と人を観察していると思います。そういった所で、色々なインプットを常にしていると思います。

ーー Sotaさんは小さい頃から人間の体の動き、可動範囲をとても繊細に受け止められてたんだと思いました。ライフドローイングも人間の骨格や肉のつき方が分からなければ描けませんし、骨格を理解しているからこそ、動きを表現することができます。プロレスやマーシャルアートも、体の動作が生むエネルギーを知るからこそ、相手へのダメージがわかりますよね。

「人間の体の動き」には昔から興味ありましたか?

特に意識はしていなかったのですが、子供の頃に見たカンフー映画やプロレスに興奮し、そのまねごとを何度も何度も繰り返していました。そして、実際に習った空手などでもその動きのダイナミックさや美しさなどに惹かれ、自分でもその様な動きが出来るように、自分の好きな武道家や格闘家などの動きを何度も見てなぞったりしていたと思います。今過去を振り返ると、武道や格闘技を行っていたのも、強さに憧れたというよりも、動きの美しさに惹かれていたと思います。

今振り返ってみると自分が楽しいと感じた事にはおっしゃる通り人間の体の動きというトピックが多かったと思います。

ゲームアニメーターならではのチャレンジは何でしょうか?

ゲームプレイアニメーターでこそ味わえるチャレンジというのは多岐にわたるチームワーク、そしてゲーム内における問題解決だと思います。

本当に限られた経験しかないのですが、フィルムにおけるアニメーション制作は主にアニメーションリード、もしくはアニメーションディレクターなど、アニメーションの部署内のやり取りが主なコミュニケーションでした。ですが、ゲームプレイにおいては、デザイナー、そしてプログラマーなど、違う部署とのコミュニケーションをコンスタントに取り、お互いに委ねながら自分の思い描いていることをゲームに入れていく作業なので、コミュニケーション能力が非常に問われる職種だと思います。

ゲームデザインを無視して自分の好き勝手にアニメーションを作っていたのでは、ゲームとして成り立たなくなりますし、プログラマーとコミュニケーションを取らなければ、作ったアニメーションが全く違う形でゲームに入っていたりします。ゲーム制作においてはゲームデザインありきなので、最初にタスクが来た場合は、まずデザインに対する質疑応答。そしてデザインを可能にするためにどの様な形でアニメーションを作りゲームに入れていくかをプログラマーと相談。最終的にはその計画で問題ないかをデザイナーと確認。更には実際にゲームで稼働している所を皆で確認をし、それに対するフィードバックなど、何を行うにもコミュニケーションが必要となります。

そして、ゲーム制作では常に何らかの問題が起こります。それはテクノロジーの問題であったり、デザインの問題、アニメーション自体の問題であったりします。そして、それらの問題をチームメイトたちと知恵を寄せ合って解決していくのですが、解決策にも色々なアプローチがあり、状況により臨機応変にその状況にベストな解決策を求められるので、ある意味パズル的な要素もあり楽しいです。もちろん頭も痛くなる様な件もありますが・・・ 笑

この様な事は一見めんどくさく見えますが、コミュニケーションを取っていくうちにチームメイトと親しくなり、チーム全体でゲームを作っている感覚をあり、僕にとってはとても楽しいプロセスです。

キャラクターの動きの作り方は?

アニメーションは見せるという事が大前提なので、いかにプレイヤーに分かりやすく動きを伝えるかという事が大事だと思います。どのアニメーションを作る上でも、その場面において何が大事なのかを分かったうえで、大事な情報をしっかりと動きの中に入れ、そして必要ではない情報を省くという作業が必要になります。エンターテインメントですので、すべてにおいて意味が無いとダメなんですね。

例えばパンチというアクションを必要だとします。モーションキャプチャーで動きのデータを取ったとしても、ゲームは疑似世界なので、人間の動きをそのままゲームに入れたのでは、動きがまったく映えないんですね。アニメーションの基本としてディズニーのIllusion of Lifeという本でも話されていますが、アニメーションの12の原則などを参考にポーズやタイミングなどでパンチというアクション自体を際立たせるという作業は必要になります。

ですが、ゲームにおいては、そのパンチもいったいどこの場面で使われるかによって作り方がまったく変わってきます。まずはプレイヤーのパンチなのか、それとも敵キャラのパンチなのか?プレイヤーのパンチですがレスポンスが関わってきますが、敵キャラだとプレイヤーのパンチに比べてはっきりと見せるという作業が必要になります。そしてパンチ自体も弱攻撃なのか強攻撃なのかでタイミングも変わります。更にはモーション自体もゲームにおいてそのパンチ自体が何を目的に行われるのかによって変わってきます。プレイヤーのパンチなら、単数の敵に向けて行われるものなのか、もしくは複数の敵なのか?単数の敵であればモーションは目標に向かってストレートな動きとなりますが、複数の敵ならば、もっと弧を描くような動きとなります。

この様な感じでゲーム制作においては全てにおいてゲームデザインというプラスアルファの要素がが絡んでくるので、デザイナーとしっかりと話をしてその見極めが必要になってきますね。

ゲームの世界観に没頭してもらうにはどんな要素が必要ですか?

映画とゲームの大きな違いは仮想世界で実際にプレーヤーがコントローラーやキーボード、タッチパネルなどを使ってキャラクターを動かす自由を与えられるところだと思います。自由の範囲は各々のゲームによって違うのですが、その各々のルールにおいて決められた自由度を楽しむのに醍醐味があるような気がします。そして、インタラクティブな所にテレビ番組や映画とはまた一味違った没入感というものがあると思います。

この様な没入感を色々とチームで作り上げるのには、ゲームデザイン、アート、テクノロジー、全てが関わってくるので、チームメンバーの全てが色々なアイディアを寄せ合ってゲームを作り込んでいくという作業が必要だと思います。そして、ゲームプレイアニメーションにおいての代表的な例はゲームデザインとコントローラーのレスポンスの関係性だと思います。

先ほどのパンチのアニメーションを例に取りましょう。パンチのアニメーション自体はプレイヤーがパンチボタンを押し、プレイヤーの決断の元に出すアニメーションなのですが、その間プレイヤーの自由は奪われています。ですので、パンチのモーションが非常に長ければプレイヤーは他の行動を全く起こせずイライラが発生します。

パンチを押してからの時間も同じような感じで、ボタンを押してパンチのアニメーションが出ても、その振りかぶるモーションが非常に長く実際にパンチを打つアクションまでの時間がかかると、そこにはプレイヤーにとっての違和感となり、苛立ちとなります。何故かというとプレイヤーがパンチボタンを押すというアクションを取ったのは、プレイヤーがパンチを打ちたいと思った瞬間なので、その思った瞬間と実際のパンチのアクションの間に時間の差があればあるほど、決断とアクションまでに時間がかかるのでイライラしてしまいます。

ですが、このイライラもゲームを作るうえでは必要な要素であり、全ての動きを快適にしすぎると、自己意識ではちゃんとボタンを押すという行為を起こしたものの、視覚的には情報が足りず、これもまた爽快感などが無く、気持ち良くありません。更には自分の行動にとって全くリスクというものが無くなり、ゲームのバランスが崩れ、遊んでいても楽しくなくなる可能性があるんですね。

ーー 作品とその観覧者で完結する映像作品と違い、プレイヤーとゲームのinteractionが映像作品とゲーム作品の大きな違いですね。プレイ中に感じる「達成感」や「爽快感」がプレイヤーがハマってしまう一種の要素だと考えた時に、その感情をプレイヤーの中で感じてもらえるように「デザイン」するのは、時間がとてもかかると思いました。

プレイヤーの感情を作り出すために大切にしていることはありますか?

注目を浴びている作品を一度普通にプレイしてみて、後で自分の中の感情の変化を見直してどうしてそう感じたのかを自分なりに分析をしてみます。プレイヤーの達成感を作り出す方法の例としてはゲーム内のタスクをコントロールしてどの度合いの達成感を感じてもらえるように仕向けるのですが、ゲームをクリアする為の「ヒント」をその画面内で敵のキャラクターの動きなどを使って「表現」します。そのヒントをどう表現するのかもプレイヤーの感情をコントロールする一つとも言えます。

1つのゲームが出来上がるのにどのくらいかかるものですか?

ゲームによりけりで、1年から10年と結構な差があると思います。ウェブ上や簡単なスマホゲームなら1年ぐらいで作り終えるケースもありますし、トリプルエー(AAA)といった、コンソールを主なプラットフォームとしている大きなタイトルなら制作に10年ぐらいかかるケースもあると思います。コンソールゲームは平均的に3、4年はかかると思います。

リリースに至らなかったゲームもあるのでしょうか?

22年ほどゲーム作りに携わっていますが、6、7タイトルほどはキャンセルになりました。これは資金の少ない小さなスタジオだけで起こりえる事ではなく、大企業でも、トレンドの変化や世界の経済状態によって起こりえる事なので、実際にリリースされているゲームというのはある意味ラッキーなのだと思います。

今まで制作したゲームで思い出深い作品はありますか?

任天堂のルイージマンション3。子供の頃に長い入院生活があったのですが、その時にファミコンに助けられたので、その任天堂のプロジェクトに関わる事が出来たので本当にうれしかったです。ルイージ自体も、多くの人に親しまれているキャラクターですし、ゲームもしっかりと作り込まれていましたし、とても誇らしいタイトルでした。ゲーム業界においての夢がたくさん叶った作品でした。

もう一つはSleeping Dogsという香港のアンダーカバーの警察のゲーム。一度このプロジェクト自体はキャンセルされたのですが、日本のスクエアエニックスがこのプロジェクトを再開させてくれた事によって奇跡的にリリースまでこぎ着ける事が出来ました。マーシャルアート要素の強いコンバットやシューティング、そしてドライビングなどアクション色が非常に濃く、自分がやりたかった要素が詰まったゲームでした。

あとは、最近取り組んだThe Chantというゲームも思い出深いです。インディースタジオに入ったのですが、おそらく70人ほど必要なの’ゲームのサイズと比べてスタジオ自体が25名程ととかなり小さい環境でした。このスタジオに参加するまで、長らく慣れ親しんだ大きなチームサイズと比べて人数が極端に少なくサポートも得られなかったので本当に苦労をしましたし、しかもアニメーターがほぼ居なかった状態でのプロジェクトの最後の一年の時期に参加したこともあって、ゲーム全体のアニメーションに手入れをしなければいけなく、本当に大変でした。ですが、ゲームが出荷された今では自分に対してよくやったと思える作品です。

ほかにもロックスターゲームズのBullyやキャリアの最初に取り組んだSSXシリーズなど、どの作品も思い入れはありますが、この3作が大きな所かなと思います。

日本人だからこそ発揮できる「強み」はなんだと思われますか?

そうですね、日本人の強みと言えば、おもてなしや思いやりなどの調和という意味での日本の文化の中で育ったというのは大きかったと思います。日本で育った方なら感じると思うのですが、日本の社会はどちらかと言えば個よりも全体を重んじる傾向が強く、義務教育においても無意識ながらも周りとの協調性を教えられたと思います。

16歳まで日本に居たのですが、その当時はその様な社会が非常に息苦しく、結果、高校中退という形でカナダに留学をすることになりました。カナダでは個を尊重され、自分の個性を育むという行動を非常に推奨され、そういった所で非常に救われた所があるのですが、日本で培った協調性や思いやり精神は北米では当たり前ではありませんでした。

ゲーム業界に入り、チームの一員として活動するにあたり、例えば仕事をする上でデザイナーやエンジニアが作業しやすい様な形でアニメーションやシステムを作る方向に進めたり、コミュニケーションが足りないなと思えば、自分でミーティングを設けたりと、自分にとっては自然とやっていた行動が、結果チームの協調性を保つのに一役買っている事などがありました。結果、そういう意味でも重宝され、チームリード的な立場に置かれたと思います。相手の立場に立った状態でのものの考え方以外にも、マナーや几帳面さや丁寧な仕事をするのもある程度日本特有の文化・社会の賜物だと思っています。

こういった文化的な事は、環境の違うカナダで長らく過ごした上で出会った沖縄空手の先生に再認識をさせてもらった所が大きいのですが、日本で長く生活をされた経験がある方々は、こういった一面を改めて強みだと認識されてみても良いのではないかと思います。

それ以外には言語の面でもバイリンガルというのは大きかったと思います。特に日本のアニメやゲーム制作は世界でもレベルが高いと認識されていることもあり、日本語でしか得られない情報も多かったので、その点でも助かったと思います。

あとは、日本のアニメやゲームで育ったを見て育ったこともあり、表現手法の幅の広さを小さい頃から知らないうちに学んでいたと思います。世界各国に素晴らしいエンターテインメントがありますが、今や漫画、アニメ、ゲームなどの日本のコンテンツは海外において世界各国から愛されています。僕の子供の頃はこのような事に時間の無駄遣いと親や学校の先生に言われていましたが、今振り返ってみるととてもクオリティーの高いコンテンツに囲まれて、このような事に熱中出来た事が本当に今の糧となっていると思います。これもある意味日本人だからこそでもあるかなと思いますね。

過去の失敗談などありますか?

それは沢山あります(笑)。基本的には独りよがりな考え方で広い視野を持っていなかったた事が原因だったと思います。例えばアニメーションの完成度のみに固執していたり、ゲームにおいてどの様に使われるかという事を考えていなかったので、アニメーションの手直しも多く時間の無駄遣いになった事もありました。他にもゲームの機能についても自分のやりたい事をどんどん勝手に進めていたが、ゲーム全体としてのバランスが取れなくなるので使われなかったりと、結局はコミュニケーションがしっかりと取れていれば事前に防げる事ばかりでした。色々と痛い思いはしたのですが、振り返ってみると自分の情熱をもって物事を進めたお陰で色々な学びがありましたから、そういった経験も必要だったと思います。何事にもバランスが大事かなと思います。

北米ゲーム業界に興味のある方へのアドバイスは?

北米でのゲーム業界においてはCGにおいてすべてが出来るジェネラリストよりも、アニメーション、モデリングなど、各々の分野のスペシャリストの方が仕事も多いと思います。広く浅い知識もモバイルゲームなどの、小さなプロジェクトであると重宝されますが、トリプルエー(AAA)関係のプロジェクトに取り組みたければ、やはりスペシャリストになる事をお勧めします。

その上で北米での生活になるので、やはり英語は勉強をしておいた方が良いと思います。ですが、英語においては現地で得られる経験に勝るものは無いと思うので、日本での準備も出来れば良いと思いますが、語学学校なり、実際に現地で生活をして学ぶ事が一番早く上達する秘訣だと思います。

英語も結局はいくら準備をしても、第二ヵ国語を操るという面においては色々なステージで求められる事が変わってきます。例えば基本の日常英会話をクリアしても、次は仕事で使う単語の勉強。そして、ミーティングでの会話のスピード、そして、プレゼンテーションにおいてのコミュニケーション能力などと、壁というのはついて回ってくると思います。いくら準備をしても、結局は壁に当たると思うし、興味のあった北米での仕事や生活も実際にやってみたら自分の描いていた様な生活ではなかったという可能性もありますし、更には想像すらしていなかった素敵で楽しい展開もあるので、実際に動いて経験をしてみた方が世界が広がって良いかなと思います。

将来の展望は?

カナダでの生活が30年ぐらいになるのですが、日本とカナダとの2拠点生活を今年から行うつもりです。十代に日本を出たので、長らく両親とのしっかりとした時間を過ごすことが出来ていないので、もっと両親と時間を過ごしたいと思い決断しました。多くのコミュニケーションが必要とされるゲームプレイアニメーターは長らくリモートワークは難しかったのですが、幸いにもパンデミック中にリモートワークのテクノロジーが発達し、更には最近飛行機での移動の制約も無くなってきたので、これを機会に始めようと思いました。幸いにも理解のある職場が見つかったので、やはり好きなゲーム作りを行いながら出来そうなのでラッキーだと思います。時差の関係もあるので実際にどの様な感じになるか分からないのですが、取り敢えずやってみようと思っています。

ーー プレイヤーが感じる爽快感は勝手に感じている訳ではなく、そう感じるようデザインされているのですね。多くの製作関係者の涙ぐましい努力と分析、最新のスキルがあるからこそ楽しくゲームをさせてもらっていると考えると、感謝しなくてはいけませんね。

Sotaさん、沢山の面白いお話、ありがとうございました!


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