ここでは留学生の主な進学先である私立カレッジ(専門学校)と公立カレッジの特徴や違いについて解説します。
特徴一覧
学校の主な特徴や違いについて表にしました。
私立カレッジ(専門学校) | 公立カレッジ | |
---|---|---|
進学目的 | ・技術やスキルの習得 ・就労体験(コーププログラム) |
・専門技術やスキルの習得 ・一般教養 ・大学編入 ・現地就労、移住 |
メリット |
・コーププログラムが多彩 ・入学日がフレキシブル ・入学条件が厳しくない ・料金が多様 |
・カナダ人との学習環境 ・圧倒的なプログラム数 ・充実した施設 ・卒業後のポスグラ |
デメリット |
・留学生メインの学校も多い ・卒業後の就労ビザ(ポスグラ)が無い |
・入学日が少ない ・入学条件が厳しい場合あり ・学部によって留学生枠が少ない |
通学期間 | 短期から長期まで多彩(3カ月~2年間など) 最も多いのは1年コース、コープの場合は6ヵ月+6ヵ月、1年+1年など |
2年(1~4年を用意する学校あり) ※厳密には1年=2セメスター=8か月 |
入学日 | 毎月や隔月、またはセメスター毎 | 9月と1月。稀に4月 |
英語力条件 | ・一般テスト(TOEFL、IELTS等) ・一部学校のみTOEIC可(但しスピーキング別) ・学校が用意するテスト ・提携学校のパスウェイからの入学 ※目安はTOEIC換算600~780点以上 |
・一般テスト(TOEFL、IELTS等、TOEIC不可) ・付属ESLからの進学 ・提携校のパスウェイから入学 ※目安はTOEIC換算800点以上、IELTS6.0以上 |
費用 | 1年間で10,000~18,000ドル ※学科により差が激しい |
15,000~18,000ドル/年など |
就労 | ・就学中は週20時間まで ・コーププログラムの場合コープ期間は企業研修含めて週40時間まで |
・就学中は週20時間、コープやBreak期間は週40時間 ・卒業後はポスグラで最大3年間の就労ビザ |
私立カレッジ(専門学校)
専門学校は英語で「private college」「career college」「vocational school」等と呼ばれます。日本語で私立カレッジと呼ぶこともありますが、公立カレッジとはシステムがかなり異なるので専門学校という言い方の方が現実に近いです。学校によっては留学生が多く(留学生100%の学校も多数)、初めて留学する方も逆に学びやすい環境が揃います。期間も数ヵ月から数年まで幅広く用意されており、計画や予算にあわせてフレキシブルに選ぶことが出来ます。また学生は各国から集まる留学生や移民が中心で、多様性のあるカナダならではの学習環境です。
なお留学生受け入れに積極的な専門学校はバンクーバーとトロントに集中しており、特にバンクーバーが多い傾向です。
目的
専門学校へ通う目的はほぼスキルの習得と就労体験と言って過言ではありません。新しい技術やスキルを学びつつ、コーププログラム(後述)なら現地企業で就労体験までする事が出来、学業の一環ではあるが「海外就労の経歴」を履歴書に書くことができます。キャリアアップ・キャリアチェンジを目指すために非常に合理的なプログラムです。
また最近は「継続的に収入を得られる」「長期滞在が出来る」という点に魅力を感じて通学される方もいます。例えば海外生活・海外就労の体験に重きを置き、既に就労経験のある分野(=学びやすい)で学ぶ方もいます。
ただ卒業後は学生ビザが切れ滞在資格が無くなり、公立カレッジのようなポスグラ(卒業後の就労ビザ発行)は無く、原則帰国する事になります。就学中・コープ中に運よく雇用主を見つけるケースもありますが、本来それが目的ではありません。
入学条件
規定の英語力の証明(テストスコア等)と、場合によっては数学の成績証明、高校卒業証明などですが、公立のカレッジ・大学に比べると入学のハードルは低い傾向です。具体的に言えば入学条件の英語力が低め、入学日が多いと言った点でそのように言えます。公立カレッジでは受け付けないTOEICを利用できるケースが多く、入学ハードルがやさしくなっています。他にも学校が用意する英語力テストや提携語学学校のパスウェイプログラム経由で入学する事も可能です。
就労とコープ
専門学校へ通う留学生はプログラム期間中は最大週20時間までアルバイトが出来ます。この点がいわゆる語学学校と大きく異なります。専門学校へ通いたいと考える方の多くが「働ける・収入を作れる」点を一つの動機としています。20時間のアルバイトは勉強の分野に関係無く自由に仕事を選べます。カナダの時給であれば週20時間働けば家賃・食費は一ヶ月の給料で十分カバーする事も可能です。
この週20時間の自由な就労に加え、コープ(Co-op)プログラムは全期間の最大50%までフルタイムの就労体験が織り込まれています。このコープ期間は通常有給で(学校や州によっては有給が義務ではない)、学校の支援を得て就労先を決める事が出来ます。
コーププログラムの詳細、仕組み、活用法などはコープ特集をご覧ください。
ただ最終的に就労や移民を目指す場合、コープ期間の就労はWork Experienceとは認められないためご注意下さい。(コープはあくまでプログラムの一環であり正式な就労ではなく、学生ビザの滞在としてカウントされます)
コープの有無は学生が選べる場合もあり、例えば授業だけで一年間のコースに追加費用を払う事で一年のコープが加わりトータル2年のプログラムになる、という場合があります。
コープの仕組み解説動画もご覧下さい!
専門学校のメリット・デメリット
コーププログラムを活用する事で、通学中はつねに仕事をする事が可能で、生活費をある程度現地でまかなうという事も不可能ではありません。トータルでは授業料もある程度収入から稼げます。また専門学校は業界との繋がりが強いためネットワークを広げ、またコープ経験を通して実際の就労に結びつけるチャンスもあります。公立カレッジと比べると、学費が抑えられ、入学条件も比較的高くなく、入学タイミングも多彩な点が専門学校の強みです。
しかしながらカレッジのようなポスグラ制度が無いため、卒業したらビザが切れ帰国する必要があります。カナダでの就労を目指す場合は学生の間に雇用主を見つける必要があります。
公立カレッジ
カレッジは日本で言う短大・大学に近い存在で、通常は2年間で卒業できるDiplomaをメインに提供しています。また殆どのカレッジは1年間で修了出来るCertificateも用意し、最近は3年間のAssociate Degreeや4年間のDegreeなど、大学と同じように学位を提供するカレッジもあります。
カレッジは専門学校より圧倒的に学校の数が多く、プログラムの選択肢も豊富です。 セメスター(学期)制となっており、通常は9月、1月の年2回スタートする場合が殆どです。4月~8月は夏休みとなる場合が殆どですが、この期間に授業を提供する学科もあります。2セメスターでCertificate、4セメスターでDiplomaの修了が一般的です。
また卒業後に1~3年の就労ビザを申請出来るポスグラ(Post Graduation Work Permit)(※後述)の制度があり、むしろこれを目的にカレッジ進学する方もいるほどです。
学校の仕組みやメリット等は公立カレッジの仕組みもご覧ください。
カレッジに通う目的
1)専門技術・スキルの習得
殆どのカレッジに「職業訓練」要素の強いプログラムがあり、学校全体がその目的で運営しているケースもあります(例:VCCなど)。このタイプは1年プログラム(Certificate)も多く、1,2年で学び、卒業後のポスグラで実践するというスタイルが可能です。
2)大学編入
多くのカレッジは大学編入の仕組みを用意しています。つまり2年間のDiplomaを修了すると、提携している大学の3年次に入学する資格を得られるというものです。このような仕組みは州単位で整備されている事が多く、またカナダ人にカレッジ経由の大学進学は一般的です。初めから大学進学するよりコストを抑えられ、英語力・学力の点でハードルが低いカレッジからスタートするのも賢明な方法です。(例:Langara College、動画)
3)一般教養
いわゆるリベラルアーツと呼ばれる、人文科学・社会科学の学問を勉強するプログラムも用意されています。このようなプログラムは大学編入に力を入れている学校に多く見られます。就職でも大学編入でもなく、純粋に二年間勉強をしたい、という方にも公立カレッジは多くの選択肢を用意しています。
3)就労・移民
卒業後のポスグラ(後述)は長期滞在を可能とし、また現地就労がしやすく移民の架け橋となります。そのため、海外で働きたい、カナダに移住したいという考える方が、その手段として公立カレッジ通学(2年間)を選ぶ方も多くいらっしゃいます。入学のハードルはコスト、期間はある程度の負担になりますが、
就労とポスグラ
カレッジ・大学の学生は専門学校生と同様に、学業期間は週20時間のアルバイトが可能となっています。
これに加えて卒業後に一定期間働ける制度があり、これをポスト・グラデュエイト・ワーク・パーミット・プログラム(Post-Graduation Work Permit Program)と呼びます。名称が長いためポスグラとよく呼ばれます。このポスグラは原則公立カレッジ・大学の本科に通う学生の特権で、付属語学コースや一般の語学学校、私立の専門学校・大学は対象外ですので、留学生にとってはこのポスグラ制度がカレッジと専門学校を差別化する大きな要因です。
ポスグラは、一年プログラム(2セメスター)卒業した場合は一年、二年のDiploma(4セメスター)を卒業すると3年分の就労ビザを申請できるため、長期滞在や永住権を狙う人は通常カレッジの進学を目指しています。
このポスグラが目的で公立カレッジを目指す留学生が多いのも事実です。それほど卒業後の就労ビザの価値は大きいものです。
なおカレッジ・大学にもコーププログラムが一部ありますが、専門学校のように授業の50%という仕組みではありません。インターンに近いイメージで、有給は保証されてないというケースもあります。ただポスグラ制度があるため、卒業前の就労体験を求める学生は多くはありません。
カレッジのメリット・デメリット
卒業後のポスグラ制度を考えると、就労や移民を目指している人には確実性の高い進学先となります。ただ卒業までの費用や時間の投資が大きいため、多くの人にとってはそれがデメリットとなり得ります。
具体的なカレッジ進学のハードルは、専門学校と比べて入学基準(英語力)が高い事、トータルの学費は専門学校より高い、入学タイミングが年数回に限定されている・・等です。